自動人形の城 人工知能の意図理解をめぐる物語
人工知能の話題についてはこれから先きっと重要になってくるだろうから、知識をつけておきたいと思っていた。このほど大学の講義で「機械翻訳」に関するレポートの参考書籍として示されていたので、ひとつ読んでみることにした。
内容は人工知能のメタファーとして登場する「自動人形」(魔法で作動し、主人の命令を遂行する)と、我儘な一国の王子を中心に回るファンタジーである。この自動人形が曲者で、主人の命令に少しでも不備があると、全然違う動きをしてしまう。例えば、王子が「城を守れ」と命令すると、彼らは城の壁にへばりついて「守って」しまう。僕たち人間が、いかに無意識下で相手の意図を汲んでいるかがよくわかる。そしてそれを、機械たる人工知能にわからせることは、いかに難しいことだろう。もちろん、自動人形の描写全てが、現行の人工知能を忠実に表しているとは思わないし、それは(「魔法」という概念を持ち出している時点で)都合が良すぎるというものだと思う。ただ、人間が自分の中でどのように言語を処理しているのか、思いをめぐらすきっかけになる。
将来についてちょっと楽観的になった。人間が誰しも持っている無意識下の複雑さについて、もう少し考えてみようと思う。そういえば、いっとき流行った「人工知能の侵略」論もどこかへ行ってしまったような。